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新連載!

第一回 太陽の話

先月から始まったイギリス在住の心理占星学研究家、ユキコ・ハーウッドさんによるエッセイですが、あらためて今回よりヱニシのために書き下ろしていただくことになりました。占星学を勉強する上で登場する太陽系の10の惑星それぞれについて、神話やおとぎ話を交えながら、深く紐解いて行きます。占星学の体系に詳しい方にも、「私は◯◯座生まれ」程度しか知らないあなたにも、興味深く読んでいただけるエッセイです。       文/ユキコ・ハーウッド 構成・編集/中谷マリ 

 

 ※なお先月掲載していた「12星座英国紀行」の全編をお読みになりたい方は、ユキコ・ハーウッドさんのサイト「星の架け橋」へどうぞ。

 

 



 

                            序 

 心理占星学ではホロスコープ(生まれた瞬間の天体の配置図)を元に、その人に与えられた潜在的な可能性と、その可能性が芽吹く時期、そして人生の霊的な課題を探っていきます。
 詳しく言いますと、ホロスコープには私達が生れた時、地球から見て太陽から冥王星まで10個の天体の位置関係が記されていて、この10個の天体の名前は全てギリシア、ローマ神話の神々に由来します。
つまり人類は無意識の内に心の奥底に潜む様々な側面を、ギリシア、ローマ神話の神々に託し、人格ならぬ神格をそれぞれの天体に込めたわけです。
 
 ですからね、よく巷の占い本を見ますと「土星があなたの星座に入る今後2年半は試練と孤独の時」なんて書いてありますが、土星という天体が遠く彼方の宇宙から、人間に災いを仕掛けてくるわけでない、と私は考えます。
土星に託された、ギリシア神話「カルマの神クロノス」が象徴するサイキの一面と感応する時、なぜ孤独を感じる人が多いのか。その孤独感から何が生れようとしているのか。そして気づきと成長のテーマは何か。こういったことをホロスコープという天体マップを元に、人生の指針を内面から導き出すのが占星学の醍醐味です。

 という次第で、このシリーズでは、太陽から冥王星まで10個の天体、10人の神さまに込められた人間の心の奥底に潜む様々な声を探っていきましょう。
 

太陽を生きる、ということは

自分らしく生きるということ

誕生時の星の配置図(ホロスコープチャート)上の太陽が、ほかのどんな星のどんな影響を受けているか。それを紐解くと、「あなたらしさ」が見えてきます。画像はウィキペディアより。太陽/the Atmospheric Imaging Assembly (AIA 304) of NASA's Solar Dynamics Observatory アポロ像/約120年から140年頃のApollo Belvedere

 ギリシア神話のそもそもの太陽神はヘリオスですが、占星学では双子のアポロとアルテミスが、太陽と月の一対と考えられています。象徴的な意味で、ですね。男性性と女性性、父と母、能動性と受動性、昼と夜、陽と陰。この世に、そして一人一人の心の中に

 

 



 

存在する対極性、として捉えられています。

 アポロとアルテミスは、全知全能の神ゼウス(木星)と愛人レトの子供。浮気ばかりしているゼウスに目を光らせ、神経をとがらせていた妻のヘラは、「愛人に子供を産ませてなるものか!」と、出産の神エイレイテユイアを宮殿に閉じ込めてしまいます。
しかし面白いものですね。人の浮気性や嫉妬心は古今東西、古代ギリシアから21世紀現代日本まで何ら変わりはないようです。

 

 話を元に戻しましょう。出産を妨害されたレトですが、すんでのところで虹の神イリスが、出産の神エイレイテユイアを宮殿から引っ張り出して、レトの所に連れていきます。

 そして最初に生まれたのがアルテミス。続いてアポロ。生まれた時から黄金の光を放つアポロは光明神の性質を持つことから太陽神として

称えられます。また神託、音楽、弓矢の神であり、完全なる理想の青年像。理性で理解して制する力を表します。

 アポロが表す理性について少しお話しましょう。「理性で制する力」は「抑圧」とは違いますね。ここが大事なところです。例えば「カッとなってなぐってやろうと思ったけど、こんなことでバカバカしいと思ってやめた」なんていうこと、時々ありますね。我慢ではない。ふと我に返って醒める瞬間です。

 まずひとつ。太陽は、怒りや劣等感などの感情に振り回されずに、醒める力を表します。
単純に善悪判断とも言えますが、ひいては人生の道を選択する判断力に育っていくのが理想です。例えばね、「我が家は先祖代々、教師の家系。でも自分は先生には向かない。
親の反対を押し切って料理人になった」

 これも世間体や人の期待に流されない、醒める力の表れです。

 しかし誰しも精神的にタフなわけではありません。周囲から横槍が入ったり、経済困窮すると、心がくじけて不本意ながらも自分の道を閉ざしてしまします。
で、数年後か十数年後、大病や離婚に遭遇した時に「人生ダメ元!」と再奮起します。そしてまたくじけて、また奮起して。人生はそのくり返しです。

 自分の「太陽」を生きる旅は七転び八起きで、往々にして応援してくれる人もなく、なおかつうまくいく保証のない孤高の道のり。それでも人は、人生に悔いを残さないために、より自分に忠実に生きようと願います。

 もうひとつ。太陽を生きる時の風当たりの強さ加減ですが、民族によって模範とされる気質や生き様が違いますね。「集団の一員」として生きることを重んじる民族。「個人」として、他人とは違う観点を重視する民族。いろいろあります。そして時代や家風もあります。
 確かに。太陽は「個」の原点となる資質を表しますので、「個」としての自分を表現しにくい環境に置かれていると感じる人、自分の生まれた家や国や時代に腹を立てず、自分は一段高いハードルにチャレンジしていると捉えて、自分の真の意思を知り、その表現方法を探ることをおすすめします。

 ここではあえて、各太陽星座(雑誌に書かれている「あなたの星座」)について「牡羊座のあなたはチャレンジ精神旺盛で、未知の領域を一人で開拓していくことで、人生が開けます。半面、猪突猛進でウンヌンカンヌン」なんて書きませんね。
カタログ式の「12星座運勢性格判断」ではなく、人生の根本にある自分を深く理解する手掛かりになればと願う次第です。

 人生をオーケストラに例えるならば、ホロスコープの太陽は「指揮者」のような役割を担います。心の中の様々な矛盾する要素を、一つのハーモニーに編み上げる力です。指揮者が指揮台に立って指揮棒を振らない限り、フルートやバイオリンがどんなに上手でも、テンデンバラバラ不協和音協奏曲になってしまします。

 

 同様に、心の中の総指揮者が音頭を取らないかぎり、どんなに社会的に有名でも金持ちでも、人生はその人にとってハーモニーをもたらさず、本人の納得のいく物語には仕上がりません。

 占星学では太陽の記号は円の中の点。(⊙)円は欠けることのない「永遠」のシンボル。そして点は自我を表すと言われます。永遠不滅の宇宙の中に、私が輝いて存在する。私が存在するから、世界は意味を持ったものになる。私が存在しなければテロも津波も何の意味もないわけです。
 
 そして「輝ける私」は他人からの認知度によって育つわけではなく、自分の内面から引き出すもの。「私は唯一無二の存在」と魂が踊るような瞬間を生み出す練習も大切です。
ゴスペルを歌っている時でも、絵に没頭している時でも何でもいいですね。他人から見れば何の変哲もない絵でも、私にとってはこの世にたった1枚しか存在しないかけがえのない絵。この<かけがえのない>という感覚をつかむことが、太陽を生きる、つまり自分を生きる第一歩。
 
 という次第で、星座によってパノラマ型、一極集中型、長期戦型など理想とするスタイルは違いますが、太陽は、自分の意思で指揮棒を取り、人生を一つの物語に編み上げる力を表します。

 次回は月のお話です。

太陽はあなたが人生を生きる上でのコンダクター。自分の中のさまざまな感情や考え、立場などを捉えながら、最終的な意思決定をする時、あなたの中の太陽が活発に働き始めます。画像はウィキペディアより。ダブリン・フィルハーモニック・オーケストラの俯瞰

上/誕生時など、特定の「時」の星の配置図を作成する時に用いられる「太陽」の記号。永遠のシンボルとしての「円」の中に「自我」を表す点があります。下/日本国旗の赤い丸は一般に太陽をイメージさせるものですが、中央に点はありません。ちなみにギリシャ・ローマ神話の太陽神はアポロンで男神ですが、日本神話では天照大神、女神です。そのことに意味深さを感じますね。

 

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