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第四回 金星の話

第四回は金星のお話しです。金星は英語でVenusと呼ばれますが、その意味するところはギリシャ神話上の女神・アフロディーテのたくさんの神話と重ねられます。多くの占星学の教科書には愛と美の象徴で、個人のホロスコープ上の金星は、持ち主の魅力や、愛し愛される力などと書かれています。ですがそれだけじゃない。今回ユキコさんは、アフロディーテの神話から、金星の負の側面に斬り込んでいます。愛憎は表裏の一体。そのことを自覚しながら「愛」を表現出来るようになりたいものです。                            文/ユキコ・ハーウッド 構成・編集/中谷マリ 

 

 ※ユキコ・ハーウッドの「12星座英国紀行」をお読みになりたい方は、ユキコさんのサイト「星の架け橋」へどうぞ。

 ※本文はユキコ・ハーウッドさんの了承を得て、本サイトに掲載しております。本文の転載については原則お断りいたします。適切な目的でのご利用をお望みの方は、本サイトまでお問い合わせ下さい。

 ※本連載で使用する写真・画像の多くはウィキペディアから引用させていただいております。

 

 



 

 

 



 

 

 

 今回は金星のお話です。ローマ神話のビーナスの名で知られている金星。ギリシア神話ではアフロデイーテにあたります。

 占星学の本を見ますと、金星は愛情と美の星で、木星(ギリシア神話の全知全能の神ゼウス)と並んで、吉星。いいこと尽くしで書かれているのが、府に落ちませんね。

 私個人は月(ギリシア神話のアルテミス)と並んで、金星はホロスコープのアキレス腱。

子供の頃から引き継ぐ心の傷や痛手は、ホロスコープの月と金星が物語ることが多いように感じるからです。

 

 さて。ギリシア神話のアフロデイーテですね。クロノス(山羊座の支配星、土星)が、父ウラノス(水瓶座の支配星、天王星)の性器を切り取って、海に投げ捨て、その泡から生まれたのがアフロデイーテ。クロノスは父を天界から追放して、実権の座に就きます。

 

無限大の新たなビジョンを象徴する天空の神ウラノスと、保守の神クロノスから、誕生したアフロデイーテ。革新と保守の申し子で、「中庸の精神」を物語る。このあたりはわかりますね。極端に走らず、古き良きものを残しつつも、新たなものに少しずつ道をあける精神。金星の「均衡、調和、右と左の両方に耳を傾ける公平さ」を表すエピソードです。

 

 このアフロデイーテですね。その美しさに魅せられた西風がキプロス島に運び、彼女が上陸するとたちどころに愛と美が生れ、オリンパス神々の仲間入りをして、ゼウスの養女に迎えられる、というお話。

ヴィーナス(アフロディーテ)は父と息子の権力争いの果てに、誕生した女神です。息子クロノスは、占星学では土星(サターン)の神様と捉えられ、伝統や秩序、常識や社会性を象徴します。一方打ち破られた父親ウラヌスは、占星術では天王星の神様。現状を打破し、新たな局面を切り開こうとする力を象徴します。クロノスは、やがて自らの息子ゼウス(木星の神様)に負けて、その座を奪われるという物語が続きますが、アフロディーテの誕生神話には、単純に「愛と美」と言い切れない複雑なものを感じます。

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 ところがその後、あちこちで浮名を流し、アフロデイーテを巡って争いが絶えないため、見るに見かねたゼウスが自分の息子、ヘファイストスと結婚させます。ウロウロしないで、そこでおとなしくしていなさい。」といったところでしょうか。

 残念ながら、ヘファイストスはアフロデイーテのメガネに叶うような美貌の持ち主でなく、いたってブ男。アフロデイーテが満足するわけもなく、彼女は夫の兄弟、アレス(牡羊座の支配星、火星)と浮気してしまいます。アレスの方は血の気盛んでオツムの方は今ひとつ。でも背が高く、なかなかの美男であったそうです。

 

 と、ここまでが私達が思い描く、華麗でグラマーで妖艶な金星のイメージ。

ところが金星には、美しく華やかと手放しで喜べない一面があります。

クロノスが切り取ったウラノスの性器。地面に飛び散ったその血しぶきからは、復讐の神エリニーズが生れます。後にフユーリーズと名が変わり、黒いドレスに身を包み、目から血を流し、髪にヘビが絡みつく、おぞましい三女神の姿で描かれます。この姿は主に、子に向けられる親の呪いを表すそうです。

 

私個人の見解ですが、この修羅場は、もっぱら母娘の間で演じられることが多いように思います。

 

 個人的な愛情を物語る時に、表裏一体のようにセットでやってくるのが憎しみ。愛したい。そして愛されたい。美しくなごやかな時を人と共有したいとは、誰しも願うところ。

そのため私達は、親に、子供に、兄弟に、恋人に、友達に、できる限りの愛情と真心を込めます。ここまではいいですね。

 

ところがその真心と憧れが、相手に受け取ってもらえなかった時、自分の思うような結果にならなかった時、私達の心は失望から怒りへ。怒りから憎しみへと転じて、復讐心にメラメラと燃え上がる。これは別に珍しい話ではありませんね。親子間、夫婦間、恋人間でよく見受ける光景です。

フランスの彫刻家Guillaume II Coustouによる

ヘファイストス像。ヘファイストスは、ゼウスの妻ヘラが、一人で生んだ息子。ゼウスが自分の頭からアテナ女神を生んだことに対抗したのですが、その息子が醜く、脚が悪かったため、生んですぐに捨ててしまいました。捨てられたヘファイストスは、長じて鍛冶の神となり、数々の名品を生み出すクリエイターとなりました。このお話にも親子の愛憎劇が流れています。

確かに。恋愛や親子関係に限らず、私達は映画を観ても、おいしいご馳走を食べても一人では味気なく砂を噛む思い。「きれいねえ!おいしいねえ!」と共感して一緒に盛り上がってくれる相手がいるからこそ、喜びは2倍3倍に膨らむ。他人と美しきものや喜びを共有したいのは、人間として自然な願いです。

 

 ここでまず一つ、大切なのはギブ・アンド・テイクのバランスです。このさじ加減がなかなかうまく行かず、自分ばかりが貧乏クジを引かされているようなひがみに陥ったり。または、ことさらに自分の元に人の称賛と愛情を集めようとヤッキになったり。これがこうじて裏返ると私達の心は、復讐の女神フユ―リーズに転じてしまします。

 

 前回の水星でも述べましたがマインド同様、ハートも弾みが必要なんですね。一緒に喜んでくれる人がいれば幸いですが、たとえ一人でも自分を楽しませる練習が大事です。

 金星は内惑星(太陽と地球の間の軌道を巡る天体)で、個人的な事柄に深くかかわると言われます。ですからね、ほんの少しの時間でも、私が「楽しい。ウキウキする。」と思えることが大切です。ケーキが焼きあがる寸前でも、ビーズを紡いてネックレスを作るひと時でも、アイススケートできれいにジャンプが決まった瞬間でも、何でもいいと思います。見る人から見れば、それをして「お金にもならない。社会でほめられる値打ちもない。」ことで全然構わないですね。心が弾む感覚が一番大切です。

 

 そしてね、このウキウキ感は波紋のように広がっていくのが理想です。誰しも人に裏切られたり失望したり、過去の辛い出来事にまつわる心の傷を抱えるのですが、この傷を他の誰かで埋めてもらおうとすると、さらなる愛情と喜びの貧血状態に陥りがち。

 金星の基本は、私が私を喜ばせること。そこに共感する人が現れたら素直に喜びを分かち合い、相手を引き留めよう、所有しようと思わないこと、だと私は思います。

 

 次回は火星のお話です。

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