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         文/岡田百合香 イラスト/茂原敬子

※この記事はyenishiが作者である岡田百合香さんに企画依頼し、承諾を得て公開しています。無断での転用・転載はご遠慮願います。適切な目的でのご利用希望の際はこちらにお問い合わせ下さい。

 

 

VOl.2 元気で自由な夢夫君ワールド

 


 

 

 

 

 

4 月 1 日!「オッケー商事」の入社式。
今年は、昨年以上に新入社員が多く入社してきます。 今年も色々な奴がいるな~と、感慨深げに先輩席で見ている、営業部の岡本夢夫君。 先輩として、新人達のいい手本を見せないとな、頑張るぞ!と、力が入っています。
とはいえ色々失敗もしたよな・・・と
入社したての1 年前のことを思い出し始めました。

 

・・・・1 年前。
今日から 3 日間の新人研修というその日。
20名の中でもひときわ元気で、誰にでも笑顔で話し掛けている新人 君がいます。岡本夢夫君です。
「初めまして。岡本夢夫と言います。どうぞよろしくお願いします!」と皆に笑顔で話しています。
 (あれ、なんだか不安そうな顔している女子がいるぞ!よし、元気づけてやるか~)

「初めまして! 僕営業部に配属の岡本夢夫と言います。よろしく!!」
「あっ、はい、・・・わたしは営業事務の伊藤めぐみといいます。どうぞよろしくお願いします」
(可愛い子だな。同じ課ならいいな。どこだろう)
「な~んだ。同じ部署じゃない。営業部って1課から5課まであるんだよね。僕は 3 課だと思うんだ。 伊藤さんは、どこ?」
「あっ、私も同じ 3 課だと思います。一緒ですね」
「一緒だ~!!!そうか~。頑張ろうね」
(ヤッタゾ! やっぱり僕ってツイているな!)

調子の良い夢夫君は、めぐみさんと一緒というだけで、ハイテンションで新人研修を過ごしました。同期からも既に人気者に! 
こんな性格なので、先輩や上司からも可愛がられています。

3 ヶ月が経ち、仕事も少し慣れてきました。

 夢夫君の仕事は、営業 3 課のお菓子メーカーを担当です。
大好きなお菓子の担当なので、それだけで仕事が楽しい夢夫君。
夢夫君に仕事を教えるのは、涼太課長です。
涼太課長は夢夫君とはまったく違う性格。論理的で分析力もあり、冷静沈着で客観的。
夢夫君にとっては、初めて出会う人種! 
苦手ではないですが、まだまだ理解しがたい部分が多いので、ちょっと 緊張ぎみ。
「涼太課長! 来週の火曜日に A 社のアポが取れました! 涼太課長大丈夫ですか!」
「来週の火曜の何時かな?」
「えっと~、13 時のアポです。」
 「来週火曜の 13 時は B 社に行く予定だよね?    ダメだよ! しっかりメモしとかなきゃ。15 時に変えられるか 聞いてみて」と冷静に注意されてしまいました。
「はい、すみません! すぐ電話します」
 (また、やっちゃったよ。まあ涼太課長はいつも冷静だからいいよな。自分も見習わないと!)
「もしもし、オッケー商事の岡本と申します! あっ、田中課長いらっしゃいますでしょうか。 あっ、すみません、田中課長、時間間違えてしまって。13 時がダメなんですよ。15 時はいかがでしょうか?」
「え~、ダメなんですか。すみません。どうしようかな」


それを隣で聞いていた涼太課長。夢夫君に何か書いてメモを渡しています。
夢夫君は、それを見て、涼太課長に目くばせ。
「田中課長、では水曜日の朝 9時30 分はいかがでしょうか」
 「ありがとうございます。では水曜日よろしくお願いいたします」
「課長~。ありがとうございました。助かりました。田中さんすぐ不機嫌になるから、苦手なんですよね」
「夢夫君だめだよ。お客様は大切にしないとね。相手といいコミュニケーションを取っていくのが社会人だよ。 じゃ、水曜日だね」
「はい、そうです。本当に気をつけます。ありがとうございました!!」
夢夫君はホッと胸をなでおろしました。
(さすが、涼太課長。いつもクールでかっこいいよな。僕も早くそうなるように頑張るぞ!)

 

 ところで夢夫君は、ひそかにさゆり先輩にあこがれています。いつもやさしいし、笑顔。
会社で失敗しても、な ぐさめてくれるのは、さゆり先輩です。
「さゆり先輩! 今度ランチ食べに行きましょうよ。いつも面倒おかけてしているので、僕ランチくらいご馳走し ますよ」
「まあ、夢夫君、嬉しいこと言うわね。でも気を遣わないでね。先輩としての役目なんだから。ランチは行きま しょう。めぐみさんも誘ってみましょう」
「めぐみさん、たまには 3 人でランチ行きましょうか。どう?」と相変わらずやさしく声をかけます。
「さゆり先輩、いいんですか~。 だって、夢夫君と・・・」と遠慮しながら、いつも上目づかいのめぐみさん。
「何言ってんのよ。もちろんいいわよ。新人お二人の色々な話も聞かないとね。ね、夢夫君!」と夢夫君に顔を向けてニコ ッと微笑むさゆりさん。
「もちろん、一緒に行こうよ。明日、僕大丈夫ですよ。どうですか?」
「いいわね。じゃ、明日ランチね。」
「あっ、もう出かけないと! じゃ、行ってきます」と夢夫君は、元気よく飛び出していきました。 (な~んだ、折角さゆり先輩とゆっくり話したかったのにな。まっいっか! 今度夜飲みに行きたいな~)と、そんなことを考えながら、急いで涼太課長との待ち合わせ場所のカフェへ向かいました。

 

「課長、お疲れ様です。よろしくお願いします」
 「夢夫君、あの書類事前に見せてくれるかな」
「はい、もうバッチリです! 昨日見直しましたから」
「ありがとう」と書類に目を通す涼太課長。
その涼太課長の眉間にじわじわとシワが寄ってきました。
それに気づいた夢夫君、すかさず
「課長! 何か間違っていますか」
「夢夫君、ここ!」と淡々と冷たい口調で、書類を指しています。
「えっ、あっ、まずい! この数字は前回の見積もりのものだ! どうしてだろう、え~、見直したのに。 まいったな! あ~本当に、どうしてだろう、ちゃんと見直したのに! おかしいな~。ほんとうに見直したんです よ。」と焦りまくりの夢夫君。
 

「夢夫君、今は夢夫君がどうやったのかは問題じゃないんだよ。これからお客様にどう伝えるかが課題なんだ。 いいかい!  今、何時かな?」
「えっと、12 時 40 分です。約束まで 20 分あります」
「分かった。ちょっとパソコンで手直ししてしまうから」
涼太課長は、サクサクとパソコンを見ながら修正しています。
そんな状況なのに、夢夫君はというと、
 (ヤッベ~。昨日見直したんだけどな。あの時、あ~電話がかかってきて、それで・・・作ってる内容を上書きし なかったのかな~。あいつが電話してくるからな~。ったくもう! でもな~。折角の初見積もりを。あ~あ、情 けないな~)
とブツブツつぶやいているだけ・・・。

「夢夫君!! ちょっと」
「あっ、はいはい」
 「これを先方に見せて説明することにしたから、いいね」
 夢夫君は、あっという間にできた見積もりを感心しながら眺めています。
「夢夫君、分かった?」
「はい、課長って天才ですね! さすが! いや~すごいです。ありがとうございます」と、夢夫君は感激しっぱなし。
「いいから、じゃこれから行くよ。いいね」
 「はい、はい」
「はい、は、1 回でいいから!」
こんな調子で夢夫君は、失敗を重ねながらも、打たれ強く元気に仕事を覚えています。

 

そんなある日。月 1 回のミーティングの日がやってきました。
夢夫君は、このミーティングがあまり好きではありません。
なぜならば、一徹部長がいつも偉そうで、なんか ミーティングが楽しくないからです。
こ の日は、月の売上が落ちてしまった原因と解決策を涼太課長がスマートに説明してくれ ました。一徹部長は満足げに「頼りにしてるぞ」と言っているのを見て、夢夫がホッとし ていたところに、 「さて、夢夫君も営業頑張っているな。今月から A 社の担当になったが、どうかな?」
 (おっと、なんだよ、突然僕ですか.!)
「はい!! A 社の担当者がとても良い方で、色々と教えてくれます。先日は飲みに連れて行ってくれました。 楽しかったです!」とニコニコ元気に夢夫君は答えます。
「おいおい、相手はお客様だぞ! こちらが接待する側だ。甘えてばかりではダメだぞ。売り上げはどうなんだ」
 (ほら、出た! この上から目線の威張った調子。嫌なんだよな。でも仕事はできるからな! )

「一徹部長! お任せ下さい!!  仲良くなってしっかりと新商品を売り込んでます。今の感触は良さそうです。 来週にはお返事いただけますので、待っていて下さい」
「そうか、じゃ期待しているぞ。涼太課長もフォローよろしく頼むぞ」
 (見てろよ~。売上あげてやるぞ!! )
「はい、それはもちろんです」とクールに涼太課長は返事をしました。
 (やっぱり、涼太課長はかっこいいなー。一徹部長からも頼りにされているし、僕も頑張って、一徹部長を驚かせてやるぞ!)

めぐみさんは、涼太課長を見ながらニコニコしています。
(めぐみさんは、涼太課長のファンなんだな。なんだよ、あんなにニコニコしちゃって。僕だって)
 

すると、さゆり先輩が「夢夫君、A 社の部長が言ってたわよ。今年の新人は元気があっていいなって。 夢夫君のことよ。良かったわね。これから楽しみじゃない。頑張って」と声をかけてくれました。
「え~。そんなこと言ってくれてたんですか。いや~嬉しいな。あの部長さんとっても話やすくて、僕ファンな んですよ。いや~そうですか。ありがとうございます」とニヤニヤ有頂天です。
「夢夫君! 何ニヤニヤしているんだ。褒められたからって気を抜いたらダメだぞ!  A社は当社の長い付き合いの 大切なお客様だ。よろしく頼むよ」と一徹部長に言われてしまいました。
「はいはい、任せて下さい」
 「はい、は、1 回でいい!」
(また言われちゃったよ)

 

半年も過ぎ、夢夫君は楽しく過ごしています。夢夫君のいい所は、前向き、行動的、明るく元気、社交的、年上からも可愛がられるタイプ。ちょっとの失敗じゃめげません。営業職はまさに天職かも。
しかし、考えるよりも行動が先なので、小さなミスは毎日のこと。また前向きなのはいいのですが、問題解決 をしないところもあるので、涼太課長からはしばしば注意されてしまいます。




 

夢夫君も最近 は涼太課長の影響を受けて、集中して仕事をこなせるようになってきました。
そこへさゆり先輩が、差し入れを持ってきてくれました。
「涼太課長、夢夫君、この近くの店の肉まん買ってきたから、食べない? とっても美味しいのよ。お茶入れて くるわね」
「さゆり先輩~。わ~!! この肉まん大きいですね!! いや~おいしそう! ありがとうございます。ねっ、課長、 食べましょう、食べましょう」と大はしゃぎです。
 「私は、この書類が出来上がったらいただくことにするよ。夢夫君食べていいよ。さゆりさん、どうもありがとう」と、いたってクールです。
(やっぱり涼太課長は冷静だな~。でもせっかくの差し入れなんだから食べればいいのにな。まっ、いいか。それにしても、さゆり先輩は、やさしいな。本当に癒される~)

 

ある夜、めぐみさんが相談があると言ってきたので、軽く飲みに行きました。
「夢夫君、一徹部長っていじわるよね。私のこと嫌いなんだわ」とめぐみさん。
「そんなことないよ。一徹部長はさ、もともと厳しいけど、あれも愛情なんだよな」と前向きな夢夫君。
「夢夫君にはやさしいのよ。私にはぜんぜんよ。こっちが話しかけても冷たい返事ばかりで、それこそいっつも怒っているし、いっつも眉間にしわを寄せているし、やりづらいな」と愚痴を言いだしました。
「そうかな~。仕事はできるしさ、先週も飲みに連れていってくれて、話も聞いてくれたよ。期待しているから頑 張ってくれよ。なんて言われて嬉しかったな~」とにっこり。
「夢夫君は仕事できるから。私は仕事できないし、嫌われているし、なんか会社辞めたくなっちゃった」としょ んぼりです。
「何言ってるんだよ~。頑張ろうぜ~! ねえ、ビールでも飲んでさ。乾杯しよう」
 (めぐみさんも、考えすぎだよな。一徹部長は怖い

 


 

オッケーフィールドの他の回を読む

 

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年末押し迫った頃、営業 3 課は大忙しです。
 一徹部長がなんだか怒っています。
めぐみさんが失敗をしたようです。

(一徹部長もそんな怒らなくてもな~。でも、めぐみさんもオロオロしてばかりだから、よけいに怒られるんだよな! あっ、またトイレに行っちゃったよ。あ~さゆり先輩も! 大変だよな、先輩も・・・)

夢夫君、涼太課長は、最近は残業続きです。年末商戦でお客様の手伝いをしに出かけることが多いので、帰社は18 時過ぎ。それから書類整理などするのに大忙しで、他の事にかまっている時間はありません。
でも、こんな時でも涼太課長は、冷静に夢夫君に指示を出して仕事をサクサクこなしていきます。

「夢夫君! この書類まだ修正してないのかな」と涼太課長。
 「えっ、これって明日までにやればよかったんですよね」


「夢夫君! このアポイントもしちゃったのか? 明日 3 件もお客様に行けるのか?」と涼太課長 。
「あ~、大丈夫ですよ。3 件行っちゃいましょうよ。」


「夢夫君! なぜここの売り上げが伸びないのか、調べてくれたかな?」と涼太課長 。
「はい、まだですが、この新商品が出ればきっと売り上げ伸びると思いますよ」
「そんな推測ではだめだよ。しっかり分析するクセをつけなさい」
「はい、はい、分かりました」


「はい、は、1 回でいいからね!」 と、こんな調子です。

夢夫君は、社会人になって一人暮らしをスタート。もともと自由奔放なので、ひとり暮らしを満喫 しています。親があまりうるさいことは言わずに、のびのびと自由に育てたせいか、夢夫君は自分が好きなことには集中出来ますが、嫌いな事や我慢することは 苦手です。小さい頃は、わがままだと言われたこともありました。社会人になっても、そのクセがなかなか修正できません。面倒だなと思うと後まわしにしてし まったり、人の話をいい加減に聞き流してしまうことがあります。

年度末決算時期。案の定、大変なことが起こりました。 夢夫君が営業から戻ってきたところ、一徹部長が怒鳴っています。
 (あ~また、めぐみさん失敗したのかな)
「部長只今帰りました。あれ! どうしんたんですか。何かありましたか?」と夢夫君。
「このデータミスが発覚して、上司から注意されたぞ。全く困ったもんだ」
「あっ!!! このデータって!! これ出しちゃったんだ。これ僕が作成した違う会社のデータです!  僕が渡した のが間違っていたんです!! 申し訳ありませんでした。僕のミスです」
(ああー、めぐみさんまたトイレダッシュ?  しかし、いや~、やっちゃったよ。参ったな。とにかくデータ探さない と。データ、データ、どこだどこだ。)
夢夫君は状況がまだ読めずに、とにかく正しいデータを慌てふためき、探しています。

 

けど、仕事はできるし、頼ればいい人なんだけどな。よし、今 日はめぐみさんを盛り上げて元気づけてやるか~。僕っていい奴じゃん)

夢夫君は、話題をプライベートな話に切り替えて、めぐみさんの表情の変化にも気づかずに、賑やかに話し始めるのでした。

 

年が明け、1 年が経とうとしています。 夢夫君は、涼太課長の指導のおかげで、一人前になってきました。分析や考えることも入社当時よりはできるよ うになり、涼太課長から褒められることも多くなりました。
 (仕事に慣れてきたし、お客様との関係も上手く関われるようになって、僕って成長したよな! これで部長にも 認めてもらえるように頑張らないと)
ところが、夢夫君みたいなタイプがこうやって仕事に慣れてきた時が危険信号。 気を抜いてしまい、失敗するパターンになりやすい・・・。

一徹部長は、机に書類を叩きつけてどこかへ行ってしまいました。
冷静な涼太課長は、というと・・・。
ただただ冷静にパソコンを打ち続けていたかと思うと、突然顔を上げて
「夢夫君、このデータじゃないのか。昨日私に送ってくれたこのデータ。」
「あっ、それです。なんで間違ったんだろう。またやっちゃっいましたよ。涼太課長どうしましょう」
「すぐ、一徹部長に謝ってこい。それから、めぐみさんのせいにされたのだから、めぐみさんにも謝りなさい」
 「え~、めぐみさんのせいになっちゃってたんだ。いや~参ったな。分かりました。めぐみさんはトイレかなあ」
「その前に、部長に謝って来い! そっちが先だよ」
「はいはい、分かりました!!」
「はい、は、1 回でいいと言ったよな」とさすがの涼太課長も怒った口調です。
 (あちゃ~、また言われた!)
「部長~、一徹部長~。」

こんな営業3課ですが、4月から新人が入社してきます。どうなることやら。 夢夫君みたいなタイプ、あなたの周りにもいませんか? 明るく、行動的で、いい奴なんだけど、おっちょこちょい!
プロローグ回のテストで3の項目に沢山チェックが入ったあなたは、 あなた自身が夢夫君的要素が強いタイプかも知れません。

次回は、さゆりさんワールドです。お楽しみに~(^O^)/

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