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第九回 天王星の話

第九回は、天王星のお話です。天王星は、占星学では「革命・自由・独立」の星であり、天空の神・ウラヌスが司ると考えます。今回、ユキコさんは、天王星が個人の人生にもたらす影響力を、公転周期やギリシャ神話、天王星発見時の世相や「天王星」的な生き方をした個人にスポットを当てながら伝えてくださいました。天王星が個人の出生図上で強い影響力を持つ時、人は往々にして「天啓」を感じ、人生を大きくシフトしたくなります。いわゆる転機となることが多いのだけど、ブレない軸がないと、転機が転落へとつながりかねないリスクがあること。と言ってピピッとひらめいたことを全て封印しながら常識と保守的なムードの中で、ただただおとなしく生き続けるのも、モッタイナイ。ユキコさんの言葉は、今転機を迎えているあなたに、転機を上手に生き抜く大切なヒントが与えてくれるかもしれません。

                   文/ユキコ・ハーウッド 構成・編集/中谷マリ 

 

 ※ユキコ・ハーウッドの「12星座英国紀行」をお読みになりたい方は、ユキコさんのサイト「星の架け橋」へどうぞ。

 ※本文はユキコ・ハーウッドさんの了承を得て、本サイトに掲載しております。本文の転載については原則お断りいたします。適切な目的でのご利用をお望みの方は、本サイトまでお問い合わせ下さい。

 ※本連載で使用する写真・画像の多くはウィキペディアから引用させていただいております。



 

 

 



 

  2016年度心理占星学オンライン・コースのご案内

 

 

 オンライン研究コース5月6月のお知らせ
 5月18日水曜 日本時間午後8時-10時
           「12室の星:殉教者と救世主」
 6月15日水曜 日本時間午後8時ー10時
           「天秤座の木星」
 受講料 1回23ポンド (約3600円)
       (2月21日現在 1ポンド=159円で計算)

●「オンライン研究コース5月6月のお知らせ」

  日程に続き、以下の説明文追加

  この研究コースは、占星学の基礎知識(星座、惑星、ハウス程度)をお持ちの方を

  対象としたものです。現在学習中の方からプロの方まで、吉凶二元論にとらわれず、占星学への造詣を深めたいという方に、ぜひおすすめ。

※都合により、心理占星学ファウンデーション・コースの開催は、2017年1月に

 延期させて頂きます。あしからずご了承くださいますよう。

●オンライン・ホロスコープ・リーデイング

 人生の岐路に立っている、将来の青写真を描きたいという方におすすめの

個人セッションです。

 1回80分 65ポンド(約1万円)

 

いずれもお問い合わせ、お申込みは infoyukiko@candyastrology.co.uk に。

 

また詳しくはサイトをご覧ください。

www.candyastrology.co.uk

 

 

ユキコ・ハーウッド プロフィール

1954年大阪生まれ。1978年より、故山田孝夫氏に西洋占星学と瞑想を師事。

2007年渡英。CPA (The Centre for Psychological Astrology, ユング派の心理占星学者リズ・グリーンが主宰するロンドンの心理占星学専門校)の3年間デイプロマ・コースに入学。

2011年デイプロマ取得、卒業。

現在はブライトン在住。日本の方に向けて心理占星学オンライン・コースを開催。

 

●ユキコさんからのメッセージ●

「CPAを卒業して数年間は燃え尽き症候群のような日々でした。が、残された人生、

吉凶判断の占いではない、体系だった心理占星学を、歴史、神話、美術などを通して日本の方々に伝えていきたいと思います。

そして若い世代が、ゆくゆくはインターナショナル・アストロロジャーと呼ばれるにふさわしい占星学家に育っていくことのお手伝いが、今の自分にできることと考えています。」

惑星よもやま話 バックナンバーはこちらから

 

 

 

 

 

 惑星よもやま話は早くも第9回目を迎え、今回から土星外惑星(トランス・サタニアン・プラネット)の領域に突入します。土星外惑星は天王星、海王星、冥王星の三つですが、今日は天王星のお話です。

 

 何故わざわざ土星外惑星と区別するか。以前にお話した水星の公転周期は約3ケ月、金星は約7ケ月余り。ゆえに内惑星(太陽と地球の間を巡る天体)は、個人のバイオリズムと共鳴する神様と考えられるでしょう。例えば、先月は落ち込んでいたのに、今月はヤル気満々。日常生活でよく見受ける光景です。

 

 太陽に関しては別格です。太陽は太陽系の中心で自ら光を放つ恒星。月は地球の周りを巡る衛星です。例えて言うなら、太陽/月は内的な父母のような存在。水星・金星・火星が、太陽と月の願いに共感したり反目したりを繰り返しながら、最終的には天体の神様が手を取り合って、一つの人生に編み上げられていくことが理想です。太陽と月に関しては別格です。太陽は太陽系の中心で自ら光を放つ恒星。月は地球の周りを巡る衛星です。例えて言うなら、太陽/月は内的な父母のような存在。水星・金星・火星が、太陽と月の願いに共感したり反目したりを繰り返しながら、最終的には天体の神様が手を取り合って、一つの人生に編み上げられていくことが理想です。

ジョルジョ・ヴァサリとクリストファノ・ゲラルディによるフレスコ画「サタン(クロノスのローマ名)によるウラヌスの去勢」と、実際の天王星の天体画像を組み合わせました。「父親殺し」の物語は、息子クロノスと妻ガイアの共謀で実現され、そのパターンはクロノスの息子ゼウスによって再現されることで、メタファーとしての強い力を持ちます。保守の神(クロノス)は革命の神(ウラヌス)を倒して王座につくけれど、新しい秩序の神(ゼウス)によって倒される・・・。現在世界のあちこちで起こる出来事と重ね合わせると、様々な発見があるかも!

 ちなみに火星は地球の軌道の外側を回りますが、公転周期が2年弱と短いことから占星学では内惑星グループに入れられています。

 

 続く木星(12年周期)、土星(約29年半周期)の外惑星は、人生節目の通過儀礼で方向指示器を示してくれる神様と述べました。木星の場合、過去12年間を振り返って、新たな12年の青写真を描く。土星は過去30年間を顧みて、今後30年の生き方を真剣に考える。土星が2サイクルを終えた59才には、後30年はないかもしれないけど残された人生で何ができるか内省する。いずれも人生の大きな分岐点と対応する神様です。

 

 補足です。カイロンは土星と天王星の間をイレギュラーな軌道で巡る天体。で、いずれのグループにも属さないアウトサイダーの存在。このカイロンが、アストロロジーの世界で今後どういう位置づけになるか、今の私には未知数です。

またカイロンに関しては前回お話しましたので、ぜひバックナンバーをご覧ください

 そして最後にトランス・サタニアン・プラネット。天王星は84年、海王星165年、冥王星248年と、一挙に公転周期が長くなります。これは何を意味するのか。公転周期が長いわけですから、個人の一生でサイクルの終了と新たな始まりを体験するのは不可能。

 確かに昨今、寿命が延びて90才まで生きることは珍しくありません。が、天王星の1サイクルを振り返って、次なる84年間の人生目標を打ち立てることはやはり不可能。

 

よって土星外惑星は世界の動向や潮流とスイングする神様と考えられます。

私達は集合体の一部として、限られた短い人生の中で、世界の発展と成長に参加貢献することになります

18世紀、封建的な社会に対する不満が鬱積していた頃、天王星が発見されます。そしてその不満が、爆発。市民による革命が起こり、貴族や宗教家などの特権が次々と壊されていきました。その勢いは、ヨーロッパ各地に広がり、19世紀にはブルジョワジーという​新たな階級が生まれ、資本主義的な社会が成長することになりました。

 天王星が発見されたのは1871年。フランス革命と時期を同じくします。

言い換えると革命で「自由、独立、博愛」の気運が高まっている時に発見された天体に、人類はこの気運を託して、ギリシア神話の天空の神ウラノスの名を与えた。そしてウラノスの名を与えた瞬間から、人類のサイキの中から「自由と独立の精神」がムクムクと首をもたげる。このあたり。「天体の動向と人間の心はシンクロする」と私が考える所以です。

 

 ギリシア神話の天空の神ウラノス、天王星。占星学では水瓶座の支配星で「革命、自由、独立」を司る惑星の神様と解釈されます。

宇宙の原初、カオスから大地の母ガイアが現れ、一人でウラノスを産み落とし、ウラノスは天空を支配。無限の空を駆け巡ります。つまりウラノスの視線は境界線だらけの地上ではなく、常に自由自在で無限大の天空に向けられるわけです。

 

 このウラノスですが、母ガイアの愛人となり、この二人の間から怪物じみた子供が次々生まれます。クロノス(山羊座の支配星、伝統と保守の神)もその一人。子供の醜さにすっかり腹を立てたウラノスは、子供達を奈落の底タルタロスに閉じ込めます。

これを嘆いたガイアが息子クロノスと共謀して、クロノスがウラノスの性器を切りとり天界から追放。クロノスが実権の座に就いたいきさつは第7話でお話しました。

さらにこのクロノスも我が子ゼウス(射手座の支配星、全知全能の神)に倒されることになります。

 シンボリックな話です。天王星に託された革命の精神は、一度は揺れ戻しの波が来て保守の勢力に呑まれたかに見えて、結局は保守の権威も倒され、そこから全く新しい秩序が生まれる。これは行きつ戻りつの、人生そして世界の成長プロセスをよく物語るように思えるのです。

 

 公転周期、発見された時期、ギリシア神話、この三つをつなぎ合わせて考えますと、私達が天王星に感応する時、つまりホロスコープ(人が生れた瞬間の天体の配置図)の重要地点を天王星が通過する時、稲妻に打たれたような衝撃を体験して、新たな人生が開けるような興奮を味わいがちです。

 

 と、ここまで書くと、カッコよく威勢よく聞こえるのですが、落とし穴一つ、いや二つ。

まず一つ。私達が天王星の呼びかけに応えようとする時、太陽に表される「シッカリした自我」が必要です。「人が何と言おうと、私はこのように考え、このように生きる」という明確な意思が育っていないと、警鐘を鳴らし変革を訴えるカリスマに、簡単に判断を預けてしまいます。このカリスマが、テロ・グループのリーダーだったり、軍国主義を呼びかける時の政権だったり、その人の目に映る天空の神の姿は様々です。

 あるいは、ただただエキセントリックな異性に、天空の神を重ね合わせてクラっとなって振り回されて終わるだけ。これもありがちな話です。

 そして二つ目。天王星に託される自由と独立の人生を歩もうとする時、三歩進んで二歩下がりの長い道のりを行く忍耐強さと、孤立無援を恐れない勇気も試されます。

 時々、耳にする質問。「理解のない夫と別れて、アロマセラピーの学校に通ったら1年後に独立できるでしょうか。」できないのです、星の動きを見るまでもなく。意地悪で言っているわけではありません。

 では、どうすればよいか。一瞬流れ込んだ高圧電流のようなビジョンを自分の人生に降ろしてくるように、チャレンジを恐れず、やってしまったことを後悔せず、理想と現実を擦り合わせつつ、根気よく進み続けるしかない。焦らなければ、そして諦めなければ、いつかはそのようになるであろう。天王星の「自由と独立」の呼びかけに応える道のりは、土星以上に長い、と私は考えます。

 例えば平塚らいてう。1886年(明治19年)に生まれ、大正から昭和にかけて女性参政権獲得のために奔走した人です。ちなみに誕生日は2月10日。彼女自身が、自由・独立の精神が際立つ水瓶座の太陽のもとに生まれています。その彼女が夢見た女性の参政権ですが、第二次世界大戦後、連合軍指導による「日本の戦後改革」まで、実現を待たなければいけなかったそうです。そして彼女は諦めずに待ったのです。

 

 女性が選挙に行く、大学に行く、自分の好きな恋人とデートする。これ当たり前と今でこそ皆が思っているわけですが、わずか100年前は前代未聞のあり得ない話。

 さらに彼女は1913年(大正2年)、「共産制が行われた暁には、恋愛も結婚も自由になりましょう。」と公言して、怒った父に勘当され、「風俗を乱す者」としてのレッテルを貼られながらも、5才年下の男性と同棲して二人の子供をもうけたそうです。

 

 天空の神に託される「まだ誰も見たことがない新しいビジョン」は、時の権威からは、無軌道な反逆児として目に映ることが往々にしてあり。要するに新たなビジョンを受け入れると旧体制が崩壊するので、体制を牛耳る者にとっては都合が悪いわけです。

天王星の手ごわいところです。「人の迷惑を顧みない自分勝手」と、「真の自由独立を目指す道のり」は、別物です。

ただ、しつこいようですが、太陽に象徴される「確固たる自我」が育たずにいて、さらに天王星からの呼びかけに耳をふさいでしまうと、世間や権威がいう「常識」が、正しい考えだと錯覚しがち。そして異論を唱える人を、皆で一緒になって排除しようとします。仲間外れが怖いから。

 

 海王星、冥王星もそうですが、トランス・サタニアンの神様の願いは世界の発展と成長です。天王星で言えば、「自由と独立と平等」が実現されるように「まだ誰も見たことのないビジョン」をこの世に降ろしてくることが、天空の神への捧げものになります。

 個人の一生で言えば、人生の分岐点でチャレンジを恐れず、少しずつ理想が実現するように歩み続けることです。

 

次回は海王星のお話です。

平塚らいてうは、1886年2月10日生まれ。1911年9月に創刊された雑誌『青鞜』で「元始、実に女性は太陽であった」と高らかに女性の独立を謳い、大正時代から昭和の戦前まで女性の参政権を求める活動をしましたが、婦人の参政権が成立したのは、敗戦後のことでした。『青鞜』創刊から40数年。鮮烈なデビューを飾った若きらいてうは、すでに老境を迎えていたわけです。

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